毘沙門堂の観桜会と山科疏水・桜並木

らくたび

2010年04月11日 12:14



春になると、今年の桜はいつまで楽しめるだろうか、
今日の花見にどれだけ桜が咲いているだろうか、
もう散りはじめかな、なんて気をもむ事しきりですが、
今年の桜シーズンは天候不順のお蔭か、意外と長く楽しめそうです。



今日の京都さんぽは、「毘沙門堂の観桜会と山科疏水・桜並木」です。
天台宗五箇室門跡の内、妙法院、青蓮院、三千院、曼殊院には
それぞれ何度が訪れる機会があったのですが、
ここ毘沙門堂へは一度もなく、ぜひ訪ねてみたいところでした。

今回の集合場所はJR山科駅、定刻には40名前後の参加者が集まっておられます。
若村さんから、本日の予定、見所などの説明を受けて、さあ出発です。



出発して間もなく、閑静な住宅街の緩やかな登り坂道を歩いていくと、
そこかしこの民家の庭に桜が咲き誇っています。
この分だと毘沙門堂の桜に期待が持てます。

途中で琵琶湖から流れ出た疏水と交差している地点に差しかかりました。
疏水の土手には沢山の桜と、目映いばかりの黄色い菜の花がいっぱいです。
そよ風に吹かれて、桜吹雪のお出迎えです。まさに春そのものです。
参加者のシャッター音があちこちから聞こえて来ます。



毘沙門堂 は703年、僧行基によって開かれたと伝えられています。
御所の北にあったのですが、度重なる戦乱から苦難の道をたどり、
1665年に山科に再建されました。
後西天皇の皇子公弁法親王が入寺して門跡寺院となりました。

ご本尊の毘沙門天は、天台宗の宗祖で比叡山を開かれた
伝教大師のご自作で、延暦寺根本中堂のご本尊である
薬師如来の余材をもって刻まれたと伝えられています。
拝観のポイントについて、説明していただきました。

<その1>
襖絵の中に面白いものがあります。梅の木には鶯、竹にはスズメが
お決まりなのですが、梅とか竹にヒヨドリとかシマヒヨドリが
描かれています。この部屋に通されたお客は、これを見て

「木と鳥が合っていない」つまり「取り合ってもらえない」

と気づかなければならないという、いかにも京都人らしい
遠まわしに意味を伝えるという部屋があるので
是非ご覧くださいとのことです。

<その2>
右から見るのと、左から見るのでは奥行きが入れ替わって見える
不思議な錯覚のする襖絵があります。
逆遠近法という手法だそうで、言葉では言い尽くせないのですが、
一度見てもらえば納得して感動していただけると思います。






境内はさすが桜の名所と言われるだけあって圧巻です。
今日はお琴の演奏もあり、琴の音を聞きながらの桜鑑賞は、
のどかで、優雅で大変素晴らしかったです。



毘沙門堂を後に、先ほどの 山科(琵琶湖)疏水 に戻り、流れに沿って歩きます。

明治2年(1869年)の東京遷都により、京都の町や人口、産業が
衰退していった折、何とかしたいと考えた第3代京都府知事北垣国道は、
琵琶湖から京都への運輸水路の開発を考えました。

当時の国家予算が7000万円。京都府の年間予算が50万円台の時代に
工費125万円をかけて、琵琶湖から鴨川落合まで、11.1kmの疏水を
明治23(1890)年完成させました。疏水の完成により

                ・ 飲料水、灌漑用水の確保。
                ・ 日本初の水力発電所(世界で2番目)の完成。
                ・ 京都市電など京都の近代化に貢献。
                ・ 日本人のみの手で行われた、誇るべき一大工事であった。
                ・ 京都市内で只一つ、北へ向かって流れる川である。


現在でも、京都御所や東本願寺の防火用水にも使われています。
当時は30石舟が行き来していました。そのため疏水に掛かる橋は、
下を船が通れるように、水面から高く作られています。



流れの速さは、人が早足で歩く程度で、いくつもの桜の花びらが
流れていました。これを 「花筏(はないかだ)」 というのだそうです。
言葉の響きと言い、とても美しい表現ですね。

また、沢山の楓の木があり、新芽が芽吹いています。
このあたりにお住まいの人は、春も秋も楽しめる環境が羨ましい限りです。
散策は勿論のこと、自転車で走れば更に爽快です。


途中に立ち寄った 吉祥山安祥寺(真言宗) は、嘉祥元(848)年、
仁明天皇の女御で文徳天皇の母、藤原順子の発願により、
入唐僧の恵運によって創建された寺で醍醐寺に匹敵する
とても大きい寺だったそうです。
非公開のため門前で説明を受けました。


しばらく、疏水に沿って桜を楽しみながら歩くと、左手に
天智天皇陵 が現れます。中臣(藤原)鎌足と謀って蘇我氏を倒し、
大化改新を行った天皇で、中大兄皇子といった人、といえば
歴史の教科書でおなじみの天皇です。

歴史の生きた教科書がこんなにも近くにあったのですから、
中学生時代にここを訪れておれば、
もっと歴史が好きになったのではないかと、後悔させられました。



散策の締めくくりは日蓮宗の 本圀寺 です。
疏水に掛かる赤い橋を渡り山手に進むと真っ赤な山門が眼に飛び込んできます。

この門はかつて加藤清正が寄進したものを復元したものだそうで、
開運勝利の神様「せいしょこ(清正公)さま」 の門をくぐると、
開運勝利の人生が開けるそうで「開運門」と呼ばれています。



仁王様も、梵鐘も、灯篭も金色づくし、こうした派手さとは対照的な
落ち着いた境内には、しだれ桜が咲いていました。

このあと、御陵駅付近に向かい解散となりました。
今回の疏水沿いの散策は、桜とのタイミングがよかったのか、
とても印象深い散策となりました。
秋の紅葉の季節にもぜひ訪れて見たい京都の穴場的な地域で、
とても気にいってしまいました。

若村さん、ご参加の皆さん、お疲れ様でした。ありがとうございました。


文・写真/らくたび会員 鴨田一美様



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