上賀茂神社の烏相撲と洛北社家町西村家散策

らくたび

2009年09月09日 11:54



今日九月九日は五節句のひとつ、 重陽(ちょうよう)の節句 です。
格調の高い響きですね。別名「菊の節句」と呼ばれてますが、
これは旧暦では菊の花の咲く時期である事からきています。

陰陽五行説によると数字の奇数は陽数と呼ばれ、古来良い数とされました。
その中でも1から9の数で、陽数の一番大きな数である9が重なる
(重陽)九月九日は特に重視され、宮中では中国の故事にちなんで、
この日菊の花びらを浸した菊酒を飲んで長寿と繁栄を願ったそうです。

この五節句の話はらくたびさんの講座で何度も採り挙げられ、
「鬼門」や、「御霊信仰」などと同様に、現代の私たちには
歴史を学ぶ上での必須の知識ですね。

ただ“菊の節句”と言われても、現在私達が使用している新暦では、
未だ菊のシーズンには早すぎますね。この辺がややこしい所です。



今日は京都の色々な神社で重陽の節句に関する行事が行われてますが、
今から参ります上賀茂神社では、更に 烏(からす)相撲 という
ユニークな神事も行われ、この烏相撲の見学が今日の京都さんぽの目的の一つです。
一の鳥居前に10時に集合しましたが、烏相撲には未だ少々早いので、
上賀茂神社の由来など詳しい説明を聞きつつ参道を本殿の方へ向かいます。

上賀茂神社 の歴史はとにかく古く、平安京遷都以前からこの地を支配していた
賀茂氏による建立で、王城鎮護の神として篤く敬われてきました。

祭神は賀茂別雷大神(カモワケイカヅチノオオカミ)で、神社の正式名称も
賀茂別雷神社です。と書いて気がついたのですが、
祭神の名前がそのまま神社の名前に成っているのは珍しいですよね。



上賀茂神社と烏相撲との関係ですが、上賀茂神社を創建した賀茂氏の祖は、
神武天皇が九州から東征して大和の国に入る時に道案内をした
八咫烏(やたがらす)と言われ、この烏は、賀茂別雷大神の祖父であり
下鴨神社の祭神である賀茂建角身命(カモタケツヌミノミコト)の
化身だそうです。祖先が烏という伝説から烏相撲に繋がるという訳です。

一の鳥居から真っ直ぐに参道が延びています。参道の右手には、
四月には見事な桜を見せてくれる「斎王桜」と「御所桜」の木が有ります。

左手は五月の「賀茂の競馬(くらべうま)」で馬が走り抜ける馬場が
続いており、ここには若い「鞭打ちの桜」という名の木が有りました。
丁度この桜のあるあたりで、競馬の時に馬に鞭を入れるそうです。



朱塗りの鮮やかな楼門に着きました。楼門の奥には国宝の本殿と、
本殿と全く同じ作りのこれも国宝の権殿があります。
重陽の節句の神事が行われていますが、楼門の傍からは直接は見えません。
境内を少し歩きながら烏相撲の始まりを待つ事にしました。

相撲というと現在では国技のスポーツというイメージですが、
昔は相撲にはもう一つの顔が有りました。
それは、健康と力に恵まれた男性が神前にてその力を捧げ、
神々に敬意と感謝を示し、悪霊退治を願うという神事という側面です。

いよいよ烏相撲が細殿という建物の前で始まりました。
細殿からは斎王代がご覧になってます。烏帽子姿の2人の刀祢(とね)が
小刻みに横飛びをした後、座った状態で
「カーカーカー、コーコーコー」と烏の鳴き声を真似る
ユニークな所作を行います。ここが本日のハイライトの一つです。
不思議な儀式です。そして、その後10人ずつに分かれた児童による相撲が
行われました。この相撲は私たちが普段見ている相撲と同じものでした。

相撲の途中でしたが、時間になったので、混むのを避けて
早めの昼食を摂るべく、「鯖煮定食」で有名な門前の今井食堂へ向かいました。

が、お休みでした。残念。水曜は定休日との事。がっかりして、
食事は後回しという事で、西村家へ向かいます。



上賀茂神社内を流れていたならの小川は、神社を出ると
明神川 と名前を変えて、門前の社家の町並みに沿って東へ流れます。
水量の豊かさにいつも驚かされます。社家とは代々神職を世襲してきた
家筋の事で、上賀茂神社の社家は江戸時代には300近い屋敷が
有りましたが、現在では30余りになっているそうです。



その社家のひとつである 西村家別邸(錦部家旧宅) を拝観しました。
ここには平安時代末の作と伝わる非常に古い庭園が残っています。
庭園は明神川の水を取り入れ、それを再び明神川へ戻す仕組みになっています。
テープレコーダーから流れる詳しい説明を聞きつつ、
落ち着いた時間を過ごしました。



お腹も空いてきました。神社では今日は菊酒の無料サービスが有る
との事でしたので、再び神社に戻りました。
丁度、相撲が終わって見物客の方々も続々と帰られてました。
人の流れに逆行して先程の細殿に戻ると、無事、
菊酒のサービスが受けれました。さあ、これで無病息災です。

今日は、ゆっくりと上賀茂神社を歩きました。
伝統を伝えていく姿を垣間見た烏相撲神事でした。


文・写真/らくたび会員 坂田肇様



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